腰や肩周辺,背中などの痛みに悩まれている方は多いと思います。
ひねったり強く打ったりしたわけでも,ましてや切ったり骨折したりしたわけでも
ないのに,痛みを感じてからかなりの期間を過ぎても,なかなか消えない痛みを
慢性疼痛といいます。
あるデータによると,日本人のおよそ22~25%(約2500万人)が何らかの慢性的な痛み
を抱えているそうです。
その大半が腰痛(背中の痛みも含む)で,次いで多いのが,肩,頭,ひざの痛みです。
以前も,腰痛と肩こりが日本人の健康に関する自覚症状のトップというお話を紹介
しましたが,おそらく,その多くが慢性的であるといえます。
近年,こうした慢性的な痛みと心の関係が注目されています。
私たちは,痛みを感じると,「痛み=ケガ」というように,肉体上の異常と結びつけて
考えがちです。
でも,そうした表面的,肉体的な異常が検査をしても見つからない,また,通常の
治療期間が過ぎても痛みが続くという状態の背景には,人間関係での緊張や不安,
深い悲しみや怒りといったストレスの長期化が関係していることが分かってきました。
ニューヨークのジョン・E・サーノ医師は,心の緊張,抑圧された感情といったストレスが
長期化すると,自律神経のバランスが崩され,筋肉や神経,腱,靭帯が酸素欠乏状態に
陥り,それが痛みとなってあらわれるという,TMS理論を1984年に発表しました。
TMSは,Tension Myositis Syndromeの略で,緊張性筋炎症候群と訳されています。
TMS理論は,慢性疼痛の治療に新たな視点を投入するきっかけにもなりました。
ここでは,本当に簡単に,ざっくりと書いてしまっていますので,
詳細は,
『サーノ博士のヒーリング・バックペイン』春秋社
『腰痛は<怒り>である』春秋社
をぜひご覧下さい。
もちろん,慢性的な痛みだからといって,すべてが,ストレスに関係しているとか,
心因性のものだというわけではありません。
別の病が原因で,痛みが生じているという場合もあります。
ですので,痛みを感じたら,まずは専門医の診察を受けることが第一です。
そこで,明らかな肉体的原因がなく,慢性的な痛みが続くというようであれば,
心の緊張,ストレスという視点も必要となってくるというお話です。
次回は,こうした慢性的な痛みとの付き合い方について,お話したいと思います。